矢幡洋の犯罪心理学と事件-日々の考察

犯罪事件コメンテーターとしてTVに出ることがあります。社会の出来事や自分の体験を心理学的に考察します。3日に一度、昔、単行本などに書いた少年犯罪分析を連載します。自分で取材した古い事件もあります。他、本家ホムペ・ブログ更新情報も告知します。

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徹底比較!佐世保高1女子加害者vs酒鬼薔薇 | みなさんは、どちらに怖さを感じますか?(修正版)

 

f:id:yahatayo:20140801143748p:plain 画像左は佐世保高1女子殺人事件加害者が美術展に出展した自画像(週刊新潮8月7日号)25ページより引用

 画像右は酒鬼薔薇事件の少年が犯行直前にノートに描いた「バモイドオキ神」(模写)

 

 先日発売された週刊文春・週刊新潮で佐世保高1女子の件を自分で昔書いた『少年Aの深層心理』から酒鬼薔薇事件について、両者を比較しつつまとめました。随ぶん異なる点もありますが、類似性もまた多いです。

 両者とも、幼児期から攻撃性が顕著だったことを考えると、根本的な動機は、「生まれつき攻撃的な傾向が強かったから」という言葉でしか説明できないかも知れません。両者を比較して、みなさんはどうお感じになるでしょうか。

 

 男女ナチュラルボーンメンへラーが項目で徹底対決

生育環境を比較する

佐世保高1女子                   

地上2階地下1階の大豪邸           

エレベーター有り、屋上で花火可能

庭には池・小川・錦鯉

グランドピアノが2台

土地・建物で2億5千万ほど(新潮)

酒鬼薔薇

中流家庭

 

家族構成

佐世保高1女子                   

両親・兄・本人(兄は東京の有名私立大学に進学)                

酒鬼薔薇

両親・本人・弟

 

父親像

佐世保高1女子                   

早大卒、やり手弁護士               

イケメン、スピードスケート(国体選手)            

佐世保長者番付、将来は市長立候補の噂(文春)大手電機企業等の顧問弁護士

母親に対しては帰宅時間などに管理的だったという証言もある

酒鬼薔薇

中卒 、働きながら技術を習得した苦労人

 

父親との関係

                  

佐世保高1女子                   

父親はスケート・スキー・ピアノを薦める

頭部を金属バットで殴られてからは、精神科病院に通わせるなど事態に懸命に対処しようとしていた

父親はフェイスブックに娘から誕生ケーキをもらったことを書いたり、周囲に「いい娘」と言ったり、関係がよいことを強調

娘は、同窓会などの公的な場所では「尊敬している」「育ててくれてありがとう。これからもよろしく」「再婚には最初から賛成」などと肯定的なコメントをしているが、「 パカボンパパデザインの誕生ケーキ 」「エイリアン」など微妙なニュアンスの発言も多く、一対一では「あんた」呼ばわり、友人の前では「ゴミ」呼ばわり

酒鬼薔薇

子どもとよく遊ぶ 

無口だが兄弟げんかは厳しく叱る

「兄弟げんかで僕だけが怒られる」と不満

 

母親像

佐世保高1女子 

東大卒、教育委員、著作有り        

地元放送局に勤めていた

子育てNPOを立ち上げる

家族が参加する県スピードスケート連盟の会長を務める

「父親が娘に向き合っていない」と不満が合った様子

酒鬼薔薇

 専業主婦 

母親との関係

佐世保高1女子               

幼少期からなつく(母親と一緒の時は笑顔を見せる)                      

学校は母親が見送り              

グランドピアノを教える             

食事は作っていない(お手伝いさん) 

癌療養中に殺害を考えて寝室までゆくが思いとどまった

 

酒鬼薔薇

近所中に聞こえるほど大声で怒鳴る

5時起床9時就寝させる

幼稚園から他人の前でも叩いた

母親に呼ばれると体をこわばらせる

「息子はひ弱」と拳法に通わせる(小学校1年生)                       

小2の時「忘れ物したことお母さんに言わないで」とパニック状態になる 

 

 

幼少時

佐世保高1女子                   

幼稚園の頃通っていた絵画教室で 落ち着きがなく感情の起伏が激しく 彼女の来る日は誰も来なくなってしまった    

あまり笑顔を見せない 

酒鬼薔薇

母親からかばってくれた祖母の背中の感触を後年まで懐かしむ

毎日弟をいじめて泣かせる

他児を砂場に押さえつけて石で殴る 

 

小学校

佐世保高1女子                   

マンガ・人形・ボカロ・生き物好き     

成績はそれほど勉強しなくてもトップクラス(東大を目指す、と公言) 

「(弁護士になる)兄・父と戦いたい」と検事の夢 

一貫して自分を「僕」と呼び、女の子らしい格好はしなかった

音楽・絵画などのコンクールで何度も受賞、スピードスケートでも活躍

酒鬼薔薇

母親を作文で「ま界のま王」と書くなど、葛藤を表現

小3で「母が見えなくなった」と騒いで「ノイローゼ」診断

上級生から非行グループのパシリに .「学校で何か問題があると俺が疑われる」と不満を持つ 

病的行動の始まり

佐世保高1女子                   

中学受験やり過ぎと同級生に批判され「馬鹿にされた」と相手の給食に 4回 続けて漂白剤を入れる。五回目は男に入れて「分かった?」と確認しにきた(特に理由なし)。 なかなか謝らず。         

突然泣き出すなどの突然の感情爆発があり、周囲は敬遠気味。                  

学校周辺に目を突かれた猫の死体、切断された手足などが発見され、女子の仕業で はないかと噂になる。猫を解体したことは 認 めている。

酒鬼薔薇

5年次に祖母死亡、悲しむ。愛犬死亡死に興味をち、蚊を ピン,のノリにつけて死んでゆくプロセス観察する。 やがてカエル・猫などの動物を様々な法で殺害し 性的興奮を覚えるようになる。小動殺害は小学校時で中止。「僕と私の家」という美のテーマに紙粘土を真っ赤に塗らしてそこに何本もカッターナイフを突き刺すという作品を作る。 

 

中学時代の暴力

佐世保高1女子                   

猫を殺したらしい。

癌で自宅療養中の母親を殺したくなり、寝室までゆくが思いとどまる。

中学3年10月、母死亡。この頃から学校に行かなくなる。(スピードスケート国体には父兄とともに参加)              

寝ている 父親の頭を金属バットで殴って頭蓋  骨陥没の重傷を負わせる。 

「殺すつもりだった」と供述。

 

酒鬼薔薇

 中学2年頃、祖母死亡。落ち込む。 中学二年生、上級生女子の家まで無表情でついてゆき(足を踏 まれたので謝ってもらおうと思った) 注 意される。その直後、自転車に乗ってゆきずりの女児 をハンマーで殴る。 3月、別の女児を 殺害その 後、ノート にバモイドオキ 神の絵を描き 「人間の壊れやすさを試す儀式アングリを行った」 と 記す。 詩「懲役13年」を周囲に見せる。 その後、友人に「犯人は自分だ」と 打ち明けるが、すでに相手がその噂を立ててをいたことを知り、呼び出して殴るケルの暴力、最後にナイフを持ち出す。    

 

犯行前 

佐世保高1女子 

中学校同窓会に行ったとき、父親を前に「感謝している。これからもよろしく」と頭を下げる。 「将来、砂漠をらくだで旅をしているかもしれないけど」と奇妙なことを言いながらも「自分を忘れないでほしい」と級友の前でスピーチ。

「イタリア(オーストラリア)に留学するため」口実で一人暮らしを始める。周囲の印象は、「夕方~夜しか姿を見せない」「いつも男物の格好をしてくらい感じ」などの生活で登校しないまま。

父親殴打がきっかけとなって、二つの精神病院に通院。精神科カウンセラーのすすめで父親の身の安全のために、見える距離の所に住む。

犯行前1週間でハンマーとのこぎりを購入、松尾さんに遊びにくるように呼びかける。

酒鬼薔薇

 その後、10日間不登校。一人でベンチにたたずんでいる姿などが見られている。

 

佐世保高1女子

 

継母に「両親を殺そうとした。人を殺して中を見たい」と言う。これを知った父親は精神科病院に入院を相談するが、断られる。少年相談の窓口に相談を持ちかけるが、時間外。

凶器を買いそろえる。松尾さんを2回にわたり自宅に招き、二回目に会うことができて、ショッピングなどをともにしている。夜8時頃、「我慢できなくなり」松尾さんを背後から後頭部をハンマーで強打。ひもで首を絞めて絞殺。

 

酒鬼薔薇

 

5月24日、自転車で「人を殺したい、殺せる相手を探そう」という目的で自転車で走り回る内(絞殺をしてみたいと思っていたので、手袋をはめていた)、小学生男児に出会う。「亀を見に行こう」と人気ない丘に入り、後ろから首を絞める。首を絞めている時はエキサイトし、射精した。

犯行後

 

佐世保高1女子 

 

犯行を隠滅する意図はなく、ベッドの上で遺体を解体しようとした。 血で文字を書こうとしたらしい跡があった。 警察と松尾さんご両親が尋ねてきたとき、返り血を浴びた服を着替えた顔を出し「知らない」と言ったが、室内を見られて発覚した。以降、取り調べには淡々と応じているとされている。

 

酒鬼薔薇

 

 犯行を隠滅しようと思い立った。その時初めて、頭部を切断してみたいという願望が浮かんだ。最初、切断された頭部は「面白く」見え、ほれぼれと見入っていたが、何日かたつと飽きてしまった。捜査攪乱のために自分の中学の校門の上に置けばかえってそこの生徒は怪しまれないと思った。「30代、学校に怨みがある男」を犯人像に仕立て上げたいと思い、頭部の口に挑戦状をはさんだ。「さあ、ゲームの始まりです 愚鈍な警察諸君 ボクを止めてみたまえ ボクは殺しが愉快でたまらない 人の死が見たくて見たくてしょうがない 汚い野菜どもには死の制裁を!!積年の大怨には流血の制裁を!!学校殺死の酒鬼薔薇」

 

 以上です。僕は、どちらかというと、佐世保の女子高生に怖さを感じます。酒鬼薔薇の方は「こういう育てられ方をしたら、ゆがむかも知れないなぁ」という理解はできるのですが、佐世保の女子の方は、恵まれた環境の中で、どうやって殺人に発展する傾向が生じたのかが、よくわからないのです。

 みなさんは、この両者を比べると、どちらに「怖さ」を感じますか?

(この記事は前に出しましたが、左右対称にしたので見にくかったので、追加情報とともに整理し直しました)