矢幡洋の犯罪心理学と事件-日々の考察

犯罪事件コメンテーターとしてTVに出ることがあります。社会の出来事や自分の体験を心理学的に考察します。3日に一度、昔、単行本などに書いた少年犯罪分析を連載します。自分で取材した古い事件もあります。他、本家ホムペ・ブログ更新情報も告知します。

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メンタル系コメンテーターが「演技性人格」と言うのは全て間違っている | 香山リカの佐村河内・小保方問題勘違い

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「専門家」たちの「演技性」パーソナリティへの誤解

 ご大層なタイトルを掲げたが、仕方がない。ぼくは、同業者が「演技性パーソナリティー」と言う言葉を使ってコメントをするときに、それが正確だと思ったことが1度もない。 「自分だけが、正確な理解をしていると言うのか」と言われるのなら、 「そうだ」と答える。


 いきなり大きく出たからには、僕がどの程度のことを知っているのか説明しておこう。ぼくは、少なくとも当時、人格障害の6人の大家たちの演技性人格障害に関する説明は全部原文で読んだ。ミロン(進化論派)カーンバーグとストーン(精神分析派) ベックとスペリー(認知療法派)ベンジャミン(対人関係論派)てある。彼らが演技性人格障害の事例としてあげる13個の事例研究は一旦そ訳して書き直した。それらの成果は『ノリの良すぎる男と担任に踊らされる女-演技性人格障害とは何か』であり、このタイプに関して丸ごと1冊で論じた本を書いているのは僕だけではないかと思う。

 

香山リカよ、「演技性性格」は演劇とは何の関係もない

 例えば、最近テレビでふと耳にしたのは、佐村河内守について「演じているうちにその人格になりきり、嘘をついている自覚もなくなってしまうのです」と言う香山リカの「演技性人格障害」コメント。


 僕は、この概念が使われるたびに、皆不勉強なまま「演技」と言う言葉に引きずられていると思う。 「演技性パーソナリティー」とは、もとより「ヒステリー性格」が広まりすぎているので、学術的な別の言葉を当てようとした経緯がある。言語の「ヒストリオニクス」は分厚い英語辞書に1行程度の訳が載っているだけのかなり特殊な言葉。おそらく、 「芝居がかった」と言うオーバーアクションを表す言葉を「演技性」という苦しい言葉で表現したものと思われる。

演技性性格とは「チャラ男」「ペラ男」「お調子者」

 このタイプは、問題とされるパーソナリティーの中でも、最も明るくノリがよく軽薄なタイプである。伝統的な日本語で言えば「お調子者」と言う言葉が最も近い。 「チャラ男」「ペラ男」などの言葉は、本質をよく言い当てている。

 

はるかにコワモテな佐村河内守氏

 香山リカは、佐村河内守氏について「演技性人格障害の可能性がある」と述べていたが、そもそも、演技性人格障害とは、 「忘れられるのは嫌だ、相手の気を引こう」という「他人によく思われたい、嫌われたくない」という他人のご機嫌取りをやる本質弱虫である。 ふてぶてしく、たったひとりで謝罪会見をし切り、憎っくき暴露記事の記者の姿を見たら拳を振り上げずには居られないような「強者(ツワモノ) 」ではない。普段はノリノリでも、いったん相手の好意が得られていないとわかればしょぼくれるだけなのだ。

相手のすきにくらいつく佐村河内守氏の強さ

 香山リカの小保方さん批判は「 『あざとかわいい』女性です。(中略)『やる気は十分。でも未熟な女性科学者』VS『マスコミ』『権力を持った理研の上司』という対立構造を見事に演出していました」と手厳しいで話題を呼んだが、これも大外れだ。 佐村河内守氏 は、 「軽い難聴の診断書はあるのだから、 『耳が聞こえない』と決めつけるのは嘘」とたった1点反撃できる箇所を反撃しまくった。肝心の「他人の作品を自分の作品として『聴力を失った作曲家』として社会を欺いた」と言う肝心のところには話を持って行かさせなかった。

小保方さんってそんなに辣腕家か?

 じゃぁ、謝罪会見の時の小保方さんは「あざとい」 「見事に演出した」と言うほどの豪腕ぶりを示したのか。佐村河内守氏とは対照的なのだ。始終弁護士の方を見ては、指示を待っていた姿は、このタイプの本質的な他人への依存性を表しているし、全体の「しゅんとした感じ」は、このタイプがいったん他人の好意が得られていないと感じるときのパワーダウンした姿にすぎない。佐村河内守氏を香山リカが「演技性人格障害」といったところで、佐村河内守氏は他人の好意など何も期待いないふてぶてしさで開き直っているのである。

おおざっぱ-派手好きだが中身はスカスカ


 演技性パーソナリティーは、とかく外部の刺激に引きずられやすい。割烹着が良さそうに思えたら、着てしまうし、ピンクの方が可愛いと思ったら、壁をピンクに塗ってしまうし。とかくノリの良さが身上なのだが、問題は外部の刺激に流される気分屋で、自分のポリシーや社会のルール・マナーに従って自分をコントロールする力の弱さである。実験ノートにもふっと「かわいい」と思ったらムーミンを書いてしまうし。本質的に、小保方さんの起こした問題は、ステキなことには(STAP細胞)うっとり夢見てしまう一方で、緻密なルール遵守や自己管理が恐ろしいまでに杜撰だった、と言うところからきている。

 

大きな事ばかり言ってまわりを振り回す杜撰上司に似ている


  日本社会は、問題を起こした人をひたすらに「極悪人」として描くことがすっかり好きになったようだ。だから、小保方さんを「全てを計算ずくでやった希代のペテン師」と糾弾する方がウケが良いだろう。だが、小保方さんの起こした問題は、日常的な例をあげれば 「新しい物好きでカタカナ語が大好き、いつもおしゃれ」と言う外面上司が「おう、今日はみんなでパパーっと楽しくいこうや。部署全員に俺がVIPにおごってやるぜー!」と皆を期待させておいて、行ってみたら、会費の集め方はデタラメだわ、出席確認どころか連絡すらろくにやってないわ、挙げ句の果てには、「VIPな店」はとっくの昔に移転していた・・・ 「あんなやつを信じた俺が馬鹿だった」 、と言う惨状の構造ににている。もっとも、引き起こした事は、このタイプが引き起こしうる混乱の最大級のものだったが。