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矢幡洋の犯罪心理学と事件-日々の考察

犯罪事件コメンテーターとしてTVに出ることがあります。社会の出来事や自分の体験を心理学的に考察します。3日に一度、昔、単行本などに書いた少年犯罪分析を連載します。自分で取材した古い事件もあります。他、本家ホムペ・ブログ更新情報も告知します。

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佐世保高1殺人少女Aのサディズム | 反社会性人格障害へとシフトできる2つの理由

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鑑定留置をきっかけに見解を修正する

 

  佐世保高1女子生徒殺害事件の鑑定留置が決定した。その前後の報道で、私の解釈に若干の軌道修正が必要であると感じるようになった。私は、統合失調型人格障害の可能性を指摘していたのだが、それよりも、私が事件に起こった当日夜にテレビ取材を受けた時に指摘したことの方がより妥当性があったと思う-加害者女生徒は反社会性人格障害である。
統合失調型人格障害という線から反社会性人格障害にシフトした、いや元に戻した理由は、主に2つである。

 

「人を殺したい」と言う願望の「起源」、問題は一線をやすやす越えたこと


1 、 「人を殺したい」と言う願望の「起源」があることがわかった

 


  「統合失調型人格障害」ではないか、と私が指摘していた大きな理由は、 「人を殺したい」と言う願望がどこから来たのか説明不可能なものだと思ったからである。 「説明不可能なものを無理にこじつける事は不毛」であり、もっともらしいストーリーを組み立てるよりも「通常の心理から了解できないものは、 『説明不能』として口をつぐむしかない」と思った。それは統合失調症の領域である「あちら側」から来たものとして、口をつぐむしかない(10年近い精神科勤務の中で、僕は統合失調症患者さんの妄想がどうして形成されたかをいちいち説明してみせることが治療に役に立ったのを見たことがない) 。


  ところが、数日前、 「人体の内部に興味があった」と「少女A」が供述しているという報道があった。さらには、一人暮らしの部屋から、解剖図などを含む医学書が見つかったという報道があった。


  これで、 「人を殺してバラバラにしたい」と言う願望の出所があったことになる。
「人体の内部に対する知的関心が高じて、実際に人体を分解してこの目で中身を見たいという願望が強まった」


  少なくとも、ここまでは言えそうだ。 「では、なぜ人体の内部に知的関心が高まったのか」と言うところまで無理に説明するべきだとは思わない。そのような関心は、必ずしも珍しくないからだ。問題は、 「知的関心を満たしたい」 「殺人を犯す」と言う2つの間をあっさりジャンプしてしまった、ということである。 (「人の体の中はどうなっているのだろう」と言う関心そのものは異常とまでは言い難いだろう。ただ、それを満たしたいのであれば、医療関係の職業を目指し、解剖学を学ぶ、というような社会から容認される方法を取ろうとする方が通常であろう)  

 

知的好奇心もあったのか?


 なお、 「小学校6年生の時に『勉強していることを馬鹿にされた』として、同級生女子に4回にわたって給食に異物を混ぜた、と言うことがある。これに関しても、 「 1回ごとに、異なる異物を混ぜていた」ということだったことを、最近の報道で知った。最初の動機が報復であっても、いちど異物を混ぜた時の相手の反応を見て、興味をそそられ、次から次へと「実験」が歯止めが効かなくなった」

 


2 .加害者少女のサディズムが少なくとも学童時代に遡ることがわかった


  これについては、以下のような(紹介が、文章を省略した形になって申し訳ないが)報道を、今朝初めて読み、実は、この記事を書く動機はここから来ている。

 

 

 

加虐性人格障害が最適だろう


 以上の行動は、 『加虐性人格障害』とされるものである。つまり、サディズムである。これが、 1番実態に近いのではないかと思う。ただし、『加虐性人格障害』は、 DSM (アメリカの精神医学会が作成している精神疾患の診断・分類体系で、国際標準となっている)の歴史の中で、いったん正式診断の候補とされたが、結局採用はされなかった、と言う幻の診断名である。現在は、 『反社会性人格障害』の1種として位置づけられることが多いようだ。非常に微妙な線で、実は『加虐性人格障害』のほうに近い。 『反社会性人格障害』は、罪悪感にかけ手段を選ばないが、その行動の目的が「自分の取り分を増やす」と言う功利的な動機であることが多い。それに対して、加害者少女の場合には、特に自分が得をする行動でなくても、 「仕返しをする」 「相手に苦痛を与える」と言う動機が強いからだ。これは、競争的な 『加虐性人格障害』の方が当てはまるように思うのだが。

 

正式診断名「反社会性人格障害」で説明できる

 

 証言を見る限り、少女は、早い段階からサディスティック・パーソナリティーの様相を見せていたのである。そして、先に述べた疑問「人間の体内を見たい」ことの前提となる殺人に何の抵抗もなかった事は、反社会性人格障害の基本的な特徴で説明が可能である。すなわち、反社会性人格障害は、異様に共感性を欠き、無慈悲で、冷血である。罪悪感や恐怖心という感情が起こってストッパーになるという通常の人間のメカニズムをかいている。これによって、 「人体への関心」が「同情・道徳心などのストッパー」をやすやすと乗り越えて「殺人」に至ったことが説明可能である。 (「人格障害」と言う言葉を用いると、 「ただのレッテル張り」と反発する方もいるが、人格障害のカテゴリーの中で、反社会性人格障害は、脳の反応が平均的なそれとは大きく異なることなどの研究成果があり、レッテル以上の「実体」が存在するデータが最も豊富なものである)

 

「無罪放免カード」として「アスペルガー障害」狙い鑑定が下る可能性

 

 そこで、この少女は「サディスティック・パーソナリティー障害」 、現代の正式診断名を用いれば「反社会性人格障害」と想定するのが最も無難であろう。その上で、私の、今後の読みを1つ伝えておこう。おそらく、弁護団が探しだした都合の良い鑑定医師が「アスペルガー障害」と言う診断を下すであろう。アスペルガー障害は、正式な診断名としては消え去ったので「自閉症スペクトラム障害」と言う診断になるかもしれない。国際的に人格障害という診断は何ら減刑の要因にカウントされないのである。 「鑑定医師が下す鑑定が正解」と信じておられる方もいるようだが、 「責任能力なしで無罪放免狙い」には、 「自閉症スペクトラム障害」の方が何とでもこじ付けられる便利なカードなのである。